CX・応対品質

CX(顧客体験)とは?CSとの違いと電話対応で高める方法

CXとCSの違いを整理し、電話の前後まで含めて顧客の体験を見直す方法を解説。再説明や待ち時間、折り返しの不安を減らす改善シートを紹介します。

公開日: Daisybell Japan

CX(顧客体験)とは?CSとの違いと電話対応で高める方法

電話口の説明は丁寧だった。それでも、何度も電話をかけ、転送先で最初から説明し、折り返しが来るか分からないまま待った。こうした体験では、担当者個人の話し方だけを改善しても、顧客の負担は残ります。

CX(顧客体験)は、顧客が企業やサービスとの接点を通じて得る体験を、前後の流れも含めて捉える考え方です。 電話対応なら、番号を探すところから、相談を終え、その後の手続きが進むところまでが見直しの対象になります。

この記事では、CXとCSの違いを整理し、電話の前後に生じる手間や不安を減らす方法を紹介します。特別な分析ツールがなくても、一つの用件を顧客の立場でたどるところから始められます。

CXとは何か

CXはCustomer Experienceの略です。広告やWebサイト、申込み、利用、問い合わせ、継続や解約など、さまざまな接点での経験が関係します。

たとえば、購入前の説明では簡単に変更できると思っていたのに、実際には変更窓口が見つからない。その場合、電話担当者が丁寧に答えても、サービス全体への印象には別の課題が残ります。

体験を一つの操作や一回の接点だけでなく、より長い関係の中で見る整理は、ユーザー体験の研究・実務でも扱われています。Nielsen Norman Groupによる体験の範囲の解説

CXを考えるときは、企業側がどの作業を済ませたかに加え、顧客が何を達成でき、どのように受け止めたかを確認します。「受付しました」という社内の状態と、顧客の「解決した」という実感は、同じとは限りません。

CXとCSの違い

CSはCustomer Satisfaction、顧客満足を指します。ただし、社内ではCustomer ServiceやCustomer Successの略として使われる場合もあるため、ここでは顧客満足という意味でそろえます。

CSとCXは、見る対象が違う。CS、期待に対する満足度、CX、接点を通じた体験全体、満足の評価と、体験全体をあわせて見る。

図1:CSとCXは、見る対象が違う。本文の関係や手順を整理した図。

観点CX:顧客体験CS:顧客満足
中心となる問いどのような経験をしているか期待に対して、どの程度満足したか
電話対応での例窓口を探す、待つ、説明する、回答後に手続きする受けた対応や結果に満足したか
見直す材料行動の流れ、発言、手間、各接点の記録満足度の回答、その理由、期待とのずれ
改善への使い方負担が生まれる場面を特定する評価の変化と、その理由を確認する

「CXは長期、CSは一回だけ」と厳密に区切れるわけではありません。満足度をサービス全体について聞く場合もあります。どの体験を、どの範囲で評価するのかを明確にすることが重要です。

また、CXは数値化できないという意味でもありません。アンケート、再入電、待ち時間、自由記述などを組み合わせ、体験の変化を捉えます。一つの点数だけですべてを説明しようとしないことがポイントです。

電話の前・最中・後を、一つの用件でたどる

以下は「申込み内容を確認したい」という架空の用件の例です。実際の顧客の行動は、受付記録や聞き取りで確かめます。

CXは電話の前後にもある。電話の前、通話中、電話の後、窓口を見つける、用件を伝える、次の行動へ進む、探しにくさ、説明の繰り返し、見通しの不足。

図2:CXは電話の前後にもある。本文の関係や手順を整理した図。

電話をかける前:迷わず窓口を見つけられるか

電話番号が分かりにくい、営業時間が別ページにしかない、何を準備すればよいか分からない。こうした状態では、会話が始まる前から手間が増えます。

窓口の説明は、社内の組織名よりも「申込み内容の確認」「予約の変更」のような用件で理解できるかを確認します。必要な情報を事前に知らせる場合も、すべての利用者が同じ画面を開けるとは限らないことを考慮します。

通話中:同じ説明や確認を繰り返していないか

最初の窓口で用件を話したのに、転送先へ伝わっていなければ再説明が必要です。事前に入力した情報を毎回聞かれる場合も、顧客には手間として残ります。

本人確認など、業務上必要な確認を省くことが目的ではありません。必要な確認の理由を伝え、すでに得た情報を適切に引き継げるかを見直します。

保留が必要な場合は、何を確認するのかを説明します。確認に時間がかかるなら、途中で状況を伝える、実行可能な折り返しを提案するなど、顧客が次を判断できる案内を用意します。

通話後:次に何をすればよいか分かるか

「担当部署へ伝えます」だけでは、顧客はいつ連絡が来るか、もう一度電話すべきか判断できません。受付した内容、まだ終わっていない処理、次に対応する人と連絡方法を、確認できた範囲で伝えます。

同じ問い合わせが再び来た場合は、最初の通話が短かったかより、何が分からないまま残っていたかを調べます。改善すべき場所が、電話以外の案内文や処理工程にあることもあります。

顧客の手間を減らすための改善シート

まず一つの用件について、顧客の行動と、自社の対応を並べて書きます。ここにある改善策は候補であり、どれが有効かは実際の記録で確認します。

場面顧客の行動・手間確認したいこと改善の候補
窓口を探す複数ページを往復する探していた用件の名称は何か用件別の案内、営業時間の明記
電話を待つ待つか切るか判断できない待ちや途中切断が集中する時間はいつか配置の調整、実行可能な折り返し
用件を伝える同じ内容を何度も説明するどこで情報が途切れるか引継ぎ項目と参照方法の整理
回答を受ける説明を理解しても操作できない次の行動まで確認できたか手順を区切った説明、要点確認
連絡を待つ依頼が届いたか不安になる誰がいつ対応する状態か受付・担当・連絡方法の明確化

改善シートの最後に、対象の用件、観測した事実、担当部署、変更内容、確認する指標を書き足します。「顧客が困っているはず」という仮説と、記録で確認した事実は区別してください。

CXを測るときは、評価と行動を組み合わせる

満足度が上がっても、アンケートに答えた人が変わっただけかもしれません。途中で切った人や、窓口にたどり着けなかった人は、通話後のアンケートに含まれにくい場合があります。

測定の観点記録・質問の例解釈するときの注意
満足度今回の対応や結果への評価応対の丁寧さと結果への評価を混ぜない
手間用件を進めるための負担感自社の質問項目と回答尺度を固定する
解決状況必要な手続きが終わったか受付と解決の定義をそろえる
再説明・再入電同じ用件を繰り返したか判定方法と観測期間を決める
自由記述何が分かりにくかったか件数だけでなく、内容と影響を見る

顧客満足度を表すCSAT、顧客の手間を捉えるCES、推奨意向を捉えるNPSなどの呼び方があります。ただし、用語を導入すること自体が目的ではありません。異なる質問文や尺度で測った結果を、そのまま比較しないようにします。

点数が下がった用件の通話や記録を確認し、どの場面で負担が生まれたかを調べます。反対に、点数が高くても、少数の利用者が先へ進めない問題を見落とさないことが重要です。

AI電話対応でCXを見直すときの確認点

AIは、定型的な案内や一次受付などを支援する選択肢になります。ただし、いつでも電話に出ることと、顧客の用件が終わることは別です。

同じ質問を繰り返す、人に話したいと伝えても切り替わらない、完了していない手続きを「完了」と案内する。このような構成では、応答できる件数が増えても体験の改善にはつながりにくくなります。

対象用件を明確にし、分からないことは追加で確認し、人が必要な場面では実際の担当窓口へつなぐ。通話後に誰が続きを担当するかも含めて設計します。AI電話対応の役割は、AI電話対応の基本記事で整理しています。

人の負担と顧客の手間が同時に減るかも確認しましょう。入力を省いた結果、担当者が後から聞き直すようになれば、負担が別の場所へ移った可能性があります。

改善は、一つの用件と担当者を決めて始める

「CXを上げる」という目標だけでは、日々の仕事へ落とし込みにくくなります。まず、問い合わせの多さ、困りごとの大きさ、自社で変更できる範囲から、対象の用件を一つ選びます。

窓口だけで直せない原因もあるため、Webの案内、申込み、実際の処理を担当する部署と共有します。どの部署が、何を、いつまでに変えるかを決め、変更後に同じ観点で確認します。

大きなシステムを入れる前に、案内文の整理や引継ぎ項目の統一で試せることもあります。施策の規模より、顧客のどの手間を減らすかを具体的にすることが先です。

顧客の手間を、四つの種類に分けて観察する

CXの改善を具体的にするには、「不便だった」という評価を、どの行動で負担が生まれたかへ分解します。電話窓口では、必要な情報を探す手間、用件を伝える手間、連絡を待つ手間、やり直す手間という分け方ができます。同じ不満の言葉でも、原因が違えば改善策も変わります。

顧客の手間はどこで生まれるか。顧客の手間、探す、伝える、待つ、やり直す、窓口・必要書類、同じ説明の繰り返し、連絡の見通し、未解決・再入電。

図3:顧客の手間はどこで生まれるか。本文の関係や手順を整理した図。

この分類は評価のための整理例であり、すべての体験を四つに押し込む必要はありません。大切なのは、顧客が実際にした行動と、自社が想定している手順との差を見つけることです。担当者が「案内したはず」と思っていても、相手には必要な情報が見つからなかったり、操作ができなかったりする場合があります。

探す手間:電話する前の準備で止まっていないか

問い合わせ先を見つけても、その窓口で何を扱うのか分からなければ、顧客は別のページを開いて確認します。営業時間が離れた場所にある、必要な番号の説明が社内用語になっている、といった点も負担になります。電話番号だけを大きく表示すれば解消するとは限りません。

改善では、用件に合う窓口、受付時間、準備する情報を一緒に確認できるかを点検します。必要情報を持っていない場合にも、そこで連絡を諦めるしかないのか、別の確認方法があるのかを示します。事前準備を求めることが、問い合わせを遠ざける案内になっていないかを見ることが必要です。

伝える手間:同じ説明をどこで繰り返しているか

転送後にもう一度名乗るだけでなく、経緯や希望を最初から説明し直しているなら、情報の受け渡しを確認します。最初の担当者が詳しく聞いていても、その内容が次の担当者へ渡らなければ、利用者には二度の説明が必要になります。受付時に聞く項目を増やす前に、後続の仕事で使われているかを確かめます。

一方、別の担当者が本人確認を行う必要がある場合など、繰り返しが必要な場面もあります。すべてを省略するのではなく、確認する理由と、既に共有されている内容を伝えます。「ご相談の経緯は確認しています。お手続きのため、本人確認をお願いします」と区切れば、どこから話せばよいかが分かります。

待つ手間:時間だけでなく、見通しの有無を見る

同じ待ち時間でも、何を確認しているか分かる状態と、連絡が来るか分からない状態では受け止め方が異なります。時間を短くする工夫とともに、次の連絡方法や、現時点で確約できる範囲を伝えます。根拠のない時刻を約束して安心させることは、後で期待とのずれを生みます。

折り返しが必要なら、相手の都合を聞き、希望と約束を分けて記録します。希望時刻に対応できるか未確認なら、その状態も共有します。担当者側では、受付された時刻、引き受けた時刻、実際に連絡した時刻を追えるようにすると、どの段階で止まっているかを調べやすくなります。

やり直す手間:解決したように見える用件を追う

一度の電話で終了していても、顧客が後から手続きをやり直していれば、用件全体では負担が残ります。書類の不足、案内先の誤り、変更結果の未反映など、通話後に起きたことまで確認します。再入電がない場合も、顧客が諦めた可能性と、問題なく終わった可能性を区別する必要があります。

改善の例としては、必要書類を手順に沿って案内する、受付後の状態を確認できるようにする、通話の最後に次の行動を一つずつ確かめる方法があります。どれを選ぶかは実際の困りごとに合わせます。顧客が終えたい仕事を見ずに案内を増やすと、説明が長くなるだけの場合もあります。

一件の用件で、顧客側と社内側の流れを並べる

以下は、申込み内容の訂正を題材にした架空の整理例です。顧客は「誤った住所を直したい」と考え、窓口を探し、電話し、訂正内容を伝えます。社内では、本人確認、対象の申込みの検索、変更可否の判断、登録、結果の連絡が必要かもしれません。両方の流れを並べると、引き継ぎの不足を見つけやすくなります。

顧客がしたいこと社内で必要な仕事体験を確かめる問い
訂正できるか知りたい対象条件の確認電話する前に条件を理解できるか
間違った箇所を伝えたい本人と対象の照合必要な情報を一度で伝えられるか
正しい内容へ直したい変更可否の判断と登録受付と変更完了を区別して案内しているか
直ったことを確かめたい結果の確認と通知次に自分がすることを理解できるか

この表には、顧客が知らなくてもよい社内事情をそのまま案内へ出すという意味はありません。社内の作業を把握したうえで、相手の判断に必要な情報へ変換します。「担当部署で処理中」という言葉だけで十分か、それとも次の連絡方法や確認事項を伝える必要があるかを考えます。

部署をまたぐ箇所には、受け渡す情報と担当者を記入します。Webの説明を直す人と電話の台本を直す人が別なら、変更内容をそろえる調整が必要です。窓口だけに改善を任せると、申込み画面や実際の処理が原因の問題に手が届かないことがあります。

アンケートは、何を知るために聞くかを先に決める

質問を増やす前に、評価したい範囲を決めます。担当者の説明が分かりやすかったか、用件を終えられたか、全体の手間が少なかったかは別の問いです。一つの質問にまとめると、点数が変わった理由が分かりにくくなります。改善対象に対応する質問を少数選び、自由記述で理由を補う方法があります。

たとえば「今回の電話で、必要な次の行動が分かりましたか」と聞く場合、用件がその場で完了する人と、後日の連絡を待つ人を分けて結果を見ます。後者については、待つ期間や連絡方法を理解できたかが評価の対象になります。すべての電話を一つの結果へまとめるより、改善すべき場面を絞れます。

回答した人の範囲も確認します。最後まで通話できた人だけに聞いているなら、途中で切った人の困りごとは別の記録から補います。回答数が少ない場合は、点数の小さな変化を大きな傾向と決めつけず、内容と観測条件を併記します。数字を示すときは、質問、尺度、対象、期間をそろえましょう。

CXの改善で起こりやすい三つの行き違い

一つ目は、問い合わせ件数の減少をそのまま成功と考えることです。案内が分かりやすくなって電話が不要になったのか、窓口が見つからず連絡できなくなったのかでは意味が違います。電話以外の問い合わせや、手続きの途中離脱、顧客の声も確認して判断します。

二つ目は、担当者の応対だけを評価することです。顧客が困っている原因が料金説明や申込み画面にある場合、電話担当者が何度説明しても根本の問題は残ります。現場の指摘を、資料や画面を管理する部署へ返す経路を用意します。誰が直せる問題なのかを分けることが重要です。

三つ目は、便利な新機能を増やすことが目的になることです。AI受付、チャット、Webフォームなどを追加しても、窓口間で情報がつながらなければ、利用者は経緯を繰り返し説明する必要があります。入口の数より、一つの用件が迷わず進むかを見てください。

改善の担当者は、変更を実施した後も同じ用件を追います。案内を短くした結果、問い合わせの内容が変わったか、転送後の聞き直しが減ったか、折り返しを待つ人の不安が残っていないかを確認します。何を変えたかと、顧客の行動がどう変わったかを対応させることが、次の改善につながります。

少人数の窓口でも続けられる振り返り

大規模な調査を最初から行う必要はありません。定期的に、うまく進んだ用件と困った用件を一件ずつ確認する方法でも、改善材料を集められます。会話の印象だけでなく、受付記録と後続の処理を照合し、顧客が最後に何をできたかまでたどります。

その際は、個人の対応を責める場にせず、手順や情報のどこが不足していたかを確認します。担当者が適切に相談した例や、未確認の内容を確約せずに引き継いだ例も共有すると、現場が取るべき行動をそろえやすくなります。改善は、顧客の負担と担当者の働きやすさを一緒に見直す機会になります。

改善後は次の接点でも確認する

電話の案内を変えた後は、その場の反応に加えて、次の手続きで同じ説明を求められていないかを見ます。電話では理解した様子でも、届いたメールの表現が違えば、顧客が再び迷うことがあります。入口から完了までの言葉や条件をそろえることが、接点をまたぐ改善になります。

確認結果は、発生した場面と顧客が必要としていた情報をセットで残します。「分かりにくい」という評価を、どの案内を直すかという具体的な作業につなげやすくなります。

よくある質問

CX向上と、丁寧な接客は同じですか?

丁寧な接客は一つの要素です。窓口への到達、手続きの分かりやすさ、通話後の連絡など、接客の前後も見直します。

CSが高ければ、CXにも問題はありませんか?

そうとは限りません。何について、誰に満足度を聞いたかによって見える範囲が変わります。回答しなかった人や、途中で離脱した人の行動も確認します。

電話時間が長いことは、悪い体験ですか?

用件と利用者によります。必要な相談を落ち着いてできた時間と、情報を探し直して待たされた時間を区別します。時間だけで一律に判断しません。

顧客が、電話の後に何をできたかまで見る

電話対応のCXは、丁寧に話したかに加え、顧客が次へ進めたかを確かめると具体化できます。窓口を探す、説明する、連絡を待つという一連の行動から、繰り返しや迷いが生まれる場所を見つけましょう。

Daisybellへのご相談では、顧客が困っている用件と、現在の受付から処理までの流れをお聞かせください。

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